010.光


ある日突然送られてきた小包。配達してくれたお兄サンはそそくさと帰ってしまって、残されたのは真っ白な紙に包まれた届け物と、それを持って立ち尽くす僕。

送り主のわからないその荷物。コタツの上に置いてみたけど、やっぱり何もわからない。

わからなかったので、とりあえず開けてみよう。受取人は僕になってるんだから、うん、間違いなく僕への荷物だ。

留めてあるところから、ゆっくりと包装紙をはがしていく。やぶれたりしないよう、慎重に。

白い紙の中に入っていたのは、水色の箱だった。紙をたたんで横に置いておく。さあ、この箱はなんだろう。無地で水色に染まった重箱にしか見えない。見えないんだから、きっとそうなんだろう。

そっとフタを持ち上げる。乱暴にして、傷がついたら大変だから。

水色の箱の中から現れたのは、橙色の袋だった。箱から取り出し、持ち上げてみる。さて、この袋にはなにが入っているんだろう。重くないから、きっと軽いものなんだろう。

きんちゃくの口を閉じる紐は緑色。その緑色の紐を、優しく引っ張る。そうしなきゃいけない気がしたから。

橙色の袋の中身は、黒いお守りだった。手のひらに乗せて、よく見てみる。どこの神社のだとか、何のお守りだとかは黒くてわからない。わからなくしてあるんだから、知らなくてもいいんだろう。

お守りを握ると、丸くてかたい感触があった。ちょっと悩んだけど、ハサミでお守りを切ってしまうことにしたためらうことなく、一息に。

黒いお守りの中に隠されていたものは、透明なガラス玉だった、小さな小さな、ビー玉よりも小さなそのガラス玉は、光を反射して虹色に輝いた。

ガラス玉で蛍光灯の灯りを透かしてみると、見慣れたはずの光にいくつもの色がついた。

ガラス玉ごしに部屋を見回すと、無機質で色褪せていたはずなのに、一瞬にして色が踊った。

赤・青・黄・緑・紫・白・黒…………

色が舞い、色が満ち、色が広がっている。

僕は色に見惚れ、色に酔い、色に溺れた。

華のように、虹のように、僕を取り囲む色と光に、僕は心を奪われた――――


ガラス玉を目の前からどけたとき、僕の心はすぐに醒めた。見えているのは、いつもと同じ無機質で色褪せている僕の部屋。

手のひらに目をやると、ガラス玉だけがキラキラ光っていて、そして僕はわかった。

この部屋に、このガラス玉は綺麗すぎる。

どこか少しだけ暖かくなった僕の心。その暖かさを確かに感じながら、僕は電話帳を探した。

次の人に、この暖かさを分けてあげるために。

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